セッション内容

科学展示

日時:
7/28    12:00-16:30
7/29~31 9:00-16:30
場所:
国立京都国際会館5階 Room 553

※ 科学展示は一般の方も参加できます。

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日本生理医学史展示

Ca2+ 世界をアッ!といわせた日本の筋研究の立役者たち

名取禮二のスキンドファイバー=細胞膜をむしり取っても生き生きとした細胞質があった。

明治維新以来、西洋の学問を取り入れながら日本独自の科学を創ろうと意欲に燃える科学者たちの中に、生理学者たちもいました。古典物理学の閉塞を打破して誕生した現代物理学の衝撃と、生物の進化を巡る議論とが、当時の世界の哲学者、物理学者、生物学者、生理学者の間に熱い議論を巻き起こしていました。人類をいまなお悩ませ続けている「生命とは何か」という議論です。細胞こそが生命の基本単位であり、細胞を壊したら生命の本質は失われると信じられました。ところが、この細胞の壁を破っても生命のほとばしりが保たれること名取禮二が世界に示しました。油中で細胞膜を剥離した骨格筋細胞標本の創製です。戦後の混乱を乗り越えての快挙でした。

カルシウム研究の父-江橋節郎博士の闘い

筋肉細胞内に生き生きと生命活動のほとばしらせる情報の担い手は何か?地球上どこにでも存在するカルシウムのようなありふれた無機物が、生き物の細胞の中で生命活動の鍵を握るような大事なはたらきをするはずはない!という考えが世界の大勢を占めました。そんな孤立無援の中で江橋節郎先生は「カルシウムが筋肉収縮の鍵である!」という自説を見事に証明し切ってみせました。カルシウム研究の夜明けです。その後、筋肉以外の分野でもカルシウムの研究が進められるようになり、今では、神経伝達や代謝、遺伝子発現など、生体細胞内のほとんどあらゆる部分でカルシウムが重要な機能を担っていることが明らかになってきています。

循環(田原結節)心臓刺激伝導系の発見者 田原 淳

房室結節を含む心臓の刺激伝導系が、1906年に日本の医学者 田原淳(Sunao Tawara)によって発見されたことは、17世紀のHarveyの血液循環の発見にも匹敵すべき世界の医学史における快挙として知られています。しかし忘れてならないのは、それが単に心臓の組織形態学上の大発見であったに止まらず、それまで100年以上に亘り続いていた、Willis (1664)に始まる心臓拍動の神経原説(neurogenic theory)とHaller(1754)に始まる筋原説 (myogenic theory) の一大論争に, 後者の勝利で完全に終止符を打ち、心臓刺激伝導系という新しい概念を確立したことにあります。またこの発見は、1903年のEinthovenによるヒト心電図記録の成功に象徴される、同時代における心臓電気現象に関する基礎的・臨床的研究の飛躍的発展への強烈な起爆剤となりました。その意味で、田原は刺激伝導系の発見者であるばかりでなく、近代における「心臓電気学の父」でもあったのです。

神経(不減衰伝導)「それでも興奮は減衰しない」―神経興奮伝導の研究(加藤元一)

神経細胞は、あたかも電線を電気信号が伝わるように、「活動電位」と呼ばれる短い電位の変化を電線に相当する「軸索」に伝えることにより情報を伝えます。電線では電気信号が距離に応じて減衰することが知られています。例えば日本から送った電気信号を海底ケーブルによってアメリカに送る際には、減衰する信号を途中で増幅する必要があります。ところが私たちの神経細胞では、時には1 m以上もの軸索を伝わって活動電位が伝わっても決して信号の大きさは減衰しない。この現象を不減衰伝導と呼びます。加藤元一博士(初代慶應医学部生理学教授)は1923年にこの不減衰伝導の概念を実験的に確立しました。

グルタミン酸(うま味、神経伝達物質)「国際的生理学用語となった二つの日本語-UMAMI(うま味)とKAINATE RECEPTOR(海人酸受容体)」~世界の研究をリードした日本人科学者たち~

グルタミン酸は地球上で最も古くから存在する有機物のひとつです。それゆえ生物は、グルタミン酸を要とする化学伝達系を発展させ今日までに至っています。グルタミン酸はエネルギー代謝の中間代謝物であるとともに、脳神経系では興奮性神経伝達物質として働き、神経細胞同士のコミュニケーションの主要な担い手です。また個体の維持に必須である栄養素、特にたんぱく質の補給において、食品中のグルタミン酸は味覚を刺激することによってたんぱく質の摂取と消化吸収を促進します。

グルタミン酸研究に対して日本人は多大な貢献を果たしてきました。グルタミン酸の塩が「うま味」という基本味であることを発見し、世界の食生活向上に大きく貢献した池田菊苗(彼が昆布のだしから見出した「うま味」物質グルタミン酸ナトリウムの味覚受容体はUMAMI受容体と呼ばれている)、グルタミン酸が神経を興奮させるアミノ酸であることを初めて示した林髞、興奮性神経伝達物質であることを証明した竹内 昭、グルタミン酸受容体作用薬を海草やキノコから発見し、その後の研究の進展に大きく貢献した篠崎温彦(彼が海人草から見出したカイニン酸は、「KAINIC ACID」型グルタミン酸受容体作動薬に名を残している)そして、数多くのグルタミン酸受容体を同定した中西重忠など名前を挙げるときりがありません。今回のパネル展示ではこれらグルタミン酸研究をリードしてきた先達たちに焦点を当て、医学研究・食品・医薬品創出による人類の健康向上に日本人科学者が果たしてきた役割を振り返り、生理学研究の持つ重要性を考えます。

サイエンスプログラム展示

細胞「体の中の小宇宙〜細胞〜大解剖」

今から350年ほど前、ロバートフックによるコルクガシの観察によって「細胞」という小さな構造が報告されました。その後、植物も動物も、当然ヒトも、全ての生物がこの「細胞」から構成されていることが分かりました。一つの「細胞」だけからできている単細胞生物もいれば、複数の、膨大な数の細胞から体ができている多細胞生物もいます。多くの生命科学者が「細胞」を研究してきました。そしてそこから生命とは何かを理解しようと試みました。細胞をその時代時代最先端の顕微鏡で観察し、時にはすりつぶし、またあるときには精密な装置に取り付けて圧力をかけたり、電気を流したりもしました。これまでの研究では、特定の生命現象に関わる部品、たんぱく質や遺伝子を探索し、その機能を一つ一つ明らかにしていくことが重要なテーマでした。このような試みによっていろいろな事が分かってきました。このような知識はここ50年くらいの間に急速に進歩してきましたので、まだ学校で用いる教科書にはそのほんの一部しか書かれていません。我々、生命科学者からすると、面白い発見がこれまでにもいっぱいあったのにそれが教えられないなんて、とっても残念なことです。例えば「iPS細胞」って何でしょう?また、「まだ分かっていないこと」も学校では習いません。驚くべきことでしょう、350年もたっても「細胞」について分からないことだらけなのです。分からないことが多すぎて、生命科学者には「細胞」をつくることができないのです。「細胞」の理解が21世紀の生命科学の大きなチャレンジです。

心臓循環器「動脈系の動的力学モデル:最高,最低血圧発生の仕組みと動脈を伝わる速さ」

心臓は、規則正しく収縮、拡張の拍動をくりかえす筋肉のポンプで、全身から心臓へ戻ってきた血液は心臓の右半分(右心系)で肺へ送られ、肺からの血液は心臓の左半分(左心系)から全身へ送り出されます。
心臓の左心室は、1回の心拍動の中で、収縮する間に血液を大動脈に送り出し、拡張する間は次の心拍で送り出す血液を左心室内に貯めるため、血液は大動脈には送り出されません。そのため、左心室内の圧力(血圧)は、収縮期に最高となり、拡張期にはほぼ0になります。
しかし、大動脈の血圧は左心室の拡張期にも0にはならず、最低血圧(約80mmHg)を維持し、最高血圧(約120mmHg)との間で左心室の拍動に伴って上下し、血液が心臓から送り出されない間も血管内を流れ続けます。これは、動脈がゴム管のような弾性を持つ管であるため大動脈血圧の上昇・下降に伴い膨らんだり、縮んだりすることにより管内に血液を蓄えたり、絞り出したりすることによって起こります。
また、血管内の血圧の変化は、波となって血管内を伝わり、手首部の動脈などではその血圧変化を脈拍として感じることができます。この脈波の伝わる速さは、血管の弾性と管内を満たす流体(液体や気体)の密度によって変わります。
このような身体の中の血液循環系で生じている「最高・最低血圧の発生と脈拍の伝わり方」のしくみを調べるため、血液循環系をモデル化し、身体の外でその(力学的な)特徴を再現した実験装置を展示しており、実際に操作することができます。

顔・認知「顔のしくみを見てみよう、顔のふしぎを体験してみよう」

ヒトにとって社会生活を送る上でヒトとのコミュニケーションは欠かせません。 そのコミュニケーションにおいて、顔や表情はとても重要な役割を果たしています。ヒトと話をしている時に、自分の気持ちが言葉だけでなく顔や表情に表れたり、逆に相手の顔や表情からその気持ちを読み取ろうとした経験があると思います。しかし、ヒトによって顔や表情は違うのに、みんなどうして正しく顔と分かるのでしょうか?
まず、顔の形態や動き(表情)を生み出すメカニズムを知るために説明パネルをみながら3次元模型をさわってみましょう。そして、顔の骨格や筋肉、そして、歯の内部構造をみてみましょう。そして、顔と分かるメカニズムを知るために、いろんな錯視図をみてヒトのみえ方のふしぎを体験してみましょう。

聴覚「耳が聞こえるしくみと病気」

私たちは、ふだん何気なく音を聞いています。では、耳は音のどのような違いを、どんなしくみで感じているのでしょうか?この展示では、音の違い、耳が音を感じるしくみ、聞こえが悪くなる病気やその治療法などを分かりやすく紹介します。

<音の性質>
実は「音」の正体は、空気がふるえてできる「波」なのです。それぞれの波には「周波数」と呼ばれる性質の違いがあります。たとえば周波数が変わると、同じ楽器でも違う音色になります。私たちの声も、色んな周波数の組み合わせでできています。耳は、このような周波数の違いをすばやく分析することで、音色や言葉の違いを聞き分けています。

<耳のしくみ>
皆さんが知っている「耳たぶ」や「鼓膜」は、音を大きくしてとらえるという大事な働きをしています。でも、音の違いを聞きわけるには、耳のもっと奥にある「内耳」という部分の働きが大切です。音が伝わると内耳は電気を発生し、周波数の違いごとに分類して、脳の中の違う部分に電気信号として送りとどけているのです。

<耳の病気と治療>
たとえば、よく聞く「耳垢」や「中耳炎」などの病気でも、聞こえは悪くなります。けれど、聞こえが悪くなる一番の原因は、内耳の病気です。最近の研究で、内耳の病気をひきおこす様々な原因が分かってきました。さらに、「人工内耳」という最新の治療法が開発され、たくさんの人が聞こえを回復することができるようになりました。

スポンサードサイエンスプログラム展示 (味の素(株)提供)

うま味の発見から100年:池田菊苗博士の志と新たな発見

1908年、東京帝京大学の池田菊苗博士は、昆布や鰹節のだし汁に特有の「うまい」と感じる味の成分がグルタミン酸であることを発見し、その味を「うま味」と名づけました。池田博士は、「滋養のある粗食を美味しくすることで栄養改善に貢献したい」との強い志からこの研究に取り組んだのです。 その後、食品科学、生理学、栄養学、味覚心理学など、さまざまな分野の国内外の研究者により「うま味」の研究成果が積み上げられました。その結果、池田博士が論文で予見したとおり、1990年後半になって甘味、酸味、塩味、苦味、そしてうま味それぞれを感知するしくみが私たちの舌にあることが解り、第五の基本味「Umami Taste」として国際的に認知されました。
現在では、グルタミン酸は味覚だけでなく、脳や消化管においても重要な情報を伝達する機能を果たしていることが明らかになりつつあります。 会場では、「うま味調味料」の製造技術やグルタミン酸の生理的機能に関する最新の知見を解りやすく紹介したパネルの展示に加え、うま味発見までの道のりをドラマ化した「AMBIATION(志)」も上映します。また、7月28日、29日には、日本人にとって大切な「だし」と「うま味」を子供たちに体感し理解してもらうサイエンスプログラムも企画しております。この展示が、日本人科学者によるうま味発見の功績と、日本の食文化の素晴らしさを知るきっかけになることを期待しています。

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